ケータイだけじゃもったいない!「全力案内!」


先日、「全力案内!」という地図やナビゲーション情報を紹介するブロガーイベントに出席してきた。車関連の仕事をしているのに車にほとんど乗らないおいらだが、その技術を聞いてみると、いや面白い。ITやテクノロジー好きならハマってしまうに違いない。

全力案内!はケータイやiPhoneなどで利用できるナビゲーションサービスで、鉄道の乗り換え案内や、徒歩・自動車での最適な道順がわかる、平たく言えば「NAVITIME」とかなりの部分で重なる。提供しているのは「ユビークリンク」という、あまり聞かない会社だが、実は野村総研からスピンアウトしたところなので、技術や資本面のバックグラウンドはでかい。

全力案内!ブロガーズイベント1

その全力案内!がウリとしていて、NAVITIMEなどと差別化しているのが、独自でリアルタイムの(渋滞などの)交通情報を収集するシステムを持っていること。こうした情報は、市販のカーナビでは「VICS」という、お役所が管理運営している情報をベースとしているのが一般的。ただし、VICSは主要な道路にしか対応しておらず、いわゆる「裏道」を使って渋滞を抜けられるような案内はしてくれない。同社によると、車が普通に通れる幅5.5m以上の道路は全国約83万Kmあるが、VICSはその8%ほどにあたる約7万Kmしかカバーしかされてないとか。

全力案内!ブロガーズイベント4

全力案内!はこれを補完して、83万Kmを対象に、そのかなりの割合(正確な距離は非公開だが、だいたい40〜50万Km?)のリアルタイム情報を提供できる。では、どうやってそうした情報を得ているのか。キーとなるのが「プローブ」である。

プローブとは『実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報。(中略)実際に走行している車から情報を収集し道路交通情報を生成するため、広範囲な道路を対象とした道路交通情報の生成・提供が可能となる(Wikipedia)』。ふむふむ、まさに自動車版Web2.0(死語?)ですな!

全力案内!ブロガーズイベント2

実は、すでにトヨタ、日産、ホンダ、そしてパイオニアのカーナビの何割かはこのプローブに対応し、それぞれのサービス会員から走行データを収集して、VICSを上回る交通情報を提供している。では、カーナビを販売していない全力案内!はどうやってプローブを得ているのか。1つは全力案内!が起動しているGPS付き携帯電話、もう1つがなんとタクシーだそうだ。

全国20社のタクシー会社と契約して11,500台からデータを受け取り。これと携帯電話から受け取った情報を組み合わせて、交通情報として配信しているというわけだ。タクシーは、一般車に比べて長時間・長距離を走っているし、地域の道路に詳しく抜け道を知っていたりするから、より質の高い情報を得られるとか。

また、現状、プローブで一般の車からデータを得るには携帯電話を使わないといけないので、手間などを考えるとかなりユーザーが限定されるけど、タクシーは独自で無線を持っていて、稼働率も高い。データが多いほどより精度の高い情報になるので、流しタクシーの多い首都圏ほど全力案内!の方が優位だろう。なお、現状では首都圏と主な大都市エリアがカバーされている。

同社が東京都内で行った走行テストでは、平均で19%、最大33%もの時間を短縮でき、さらに目的地に到着するまでの所要時間予測も誤差を約1割に収められたという。

全力案内!ブロガーズイベント3 全力案内!ブロガーズイベント5

こうして、まとめてみると技術的にはとてもすばらしい。ただし、現状は携帯電話でしか利用できないので、とてももったいない。ぜひ、市販のカーナビでも利用できるようにしてほしいところ。先ほど挙げたトヨタなどのプローブはそれぞれが閉じられたサービスで情報も使える人も限定されてしまっているが、全力案内!ならプラットフォームに依存せず「しがらみ」が少ないはず。

まだプローブに対応していないメーカーのカーナビに対応させていけば、VICSと並ぶ交通情報のデファクトスタンダードにもなれる可能性があると思う。個人的には、携帯電話向けサービスより、BtoBのライセンス事業に力を入れてシェアを広げてしまえばいいと思った。ただ、担当者に聞くと、利用者の声や傾向がつかめるBtoCは直接的な収益以外にも得られるものが多いから続けるとか。なるほど。

プローブの他にもう1つ、交通情報がクラウド化されるなんて話も面白かった。長くなってしまったので、これはまたの機会に。