HD動画こそネットに最適化された媒体

Apple TVで映画のレンタルサービスが始まる件。

iTunesのレンタルは、視聴が終わったらデータファイルが消えます。消えてくれます、といった方がいいかも知れません。これが自分の所有データだったら踏ん切りがつかずにダラダラと保管し続けてしまうと思うのですが、不思議と、レンタルだと思えばサッパリいさぎよく消えてくれるほうが嬉しいよな、と感じたのです。もしまた見たくなったら、もう一回払って見ても計6ドルだし、平均で二回は見ないであろうDVDを6ドルで買うのに比べてもまだ得だよな、と割り切れるぐらいの感覚です。

しかもリアルなレンタル店と違ってオンラインには在庫制限がないので、いわゆるロングテール型の品揃えが可能になり、自分の好きな作品がいつか棚から消えてしまうかもという心配がいりません。

せっせとDVDを買ってリッピングしていた先日までは、「1TBの外付けHDDを追加購入しなきゃなぁ」「それをバックアップするのも大変だなぁ」などとあれこれ悩んでいたのですが、「そうか、ネットの向こう側に、HDDを購入する何%かの値段でいつでも欲しいときに引き出せるライブラリがあると思えばいいのか」という風に考え方がガラリと変わったのでした。

そうすることで、データを所有することに伴う手間とコストがなくなるのです。

自分のハードディスクに保管するデータは、自分で撮影したかけがえのない写真や動画、繰り返し再生する音楽、それから一部の入手困難な動画コンテンツだけでいい。

動画(特にHD画質)は、長時間、視覚聴覚を拘束(他に何もできない)し、しかも見る場所をテレビの前に限定する。そういう媒体で何度も同じものを見るなんてことは、情報の増加に伴って今後どんどん少なくなっていくだろうから、手元に補完しておく必然性も薄れる。だからこそネット配信の方が利便性が高いし、結果的にコストも安くつく。

ブルーレイという命の短いメディアに縛られるソニーらは長い目で見れば負け組になりかねないというのも、あながちあり得ない話ではない。

次世代DVDは「過渡的な技術」であり、そのうちUSBフラッシュメモリに、そして最終的にはインターネットに取って代わられるだろう。CDの寿命は25年だが、DVDは10年、そして次世代DVDは、たかだかあと5年ぐらいの寿命だろう。こういう先の見えた市場に、コンテンツが出てくるかどうかもわからない。